水屋箪笥(戸棚)について

 滋賀、大津、彦根など近江地方や、京都、また大阪(神戸)では、昔から土間で、桧で造られた水屋箪笥(戸棚)を使って来ました。
 それらの多くは、弁柄やすすが塗られていました。
 桧は、湿気に強く、弁柄、すすは、防腐効果を高めます。
 うちで造る水屋箪笥も、このような、伝統的なものです。

伝統的な水屋箪笥は桧の框組(かまちぐみ)で造られています

水屋箪笥 木地仕上げ 伝統的な水屋箪笥は桧の框組(かまちぐみ)で造られています。框組とは、家で言う、柱組、軸組と同じ意味です。昔の建築が、桧の柱を組んで、建てられているのと同じように、太い桧の框が、がっちりと、組んで造られています。そして、側面や、棚に、杉板が貼られています。
 桧や杉は、湿気に強く腐りにくく、また狂いにくいからです。  
 そして、これらの伝統的な物の、よい所は、修理が出来るということです。
 これらの、水屋箪笥や、戸棚を、造ったり、直したりしていますが、非常に丈夫で、修理をしながら、何代でも使えます。
  

京水屋箪笥、近江水屋箪笥、組立式の戸棚

 京都では、京水屋箪笥といって、伝統的な、定番の形があります。滋賀県でも、近江水屋箪笥といって、やっぱり伝統的な形があります。大阪も同様に大阪水屋があります。 
 また、桧で組まれた、大きな、組立式の戸棚(水屋箪笥)や、押入れもあります。組立式の水屋箪笥や戸棚を、修理することがありますが、非常によく考えられて造られているのに、驚かされます。

水屋という言葉の意味

 水屋という言葉には、いくつかの意味があります。
 神社にお参りをする時に、口をすすいだり、手を洗ったりする場所と、いう意味や、茶室の端っこにある、お茶の用意をしたり、茶道具を洗ったりする場所と、いう意味であったりします。
 また、台所という意味もあります。
 そして、台所にある、ナベや食器を入れる戸棚と、いう意味もあります。茶箪笥も同じ意味です。
 ここで使う「水屋」という言葉は、最後の戸棚のことで、台所にある家具、食器棚の意味です。この場合、まぎらわしいので「水屋箪笥」という言葉が使われることが、多いようです

水屋箪笥の製作、オーダー (無垢の桧の水屋箪笥・水屋箪笥アンティーク)

 水屋箪笥の製作、ご注文、オーダー承ります。
 うちで、お造りする水屋箪笥は、無垢の桧造りです。
 そして、弁柄、すす、渋、油といった、伝統的な塗装材料を使ってアンティークに仕上げさせて頂きます。
 

千年持つ、桧(ひのき、ヒノキ、檜)

 木目が通っている桧は、狂いが少なく、粘りがあり、非常に加工し易い木です。
 また、水に強く、虫が、付きにくい木です。故に、水屋箪笥によく使われてきました。
 桧は、非常に良い香りがします。桧風呂などで、体験されるあの香りです。これは、ヒノキシンという成分の臭いですが、この成分を虫は嫌います。ですから非常に、虫が付きにくいわけです。
 そして、桧は、千年持つと言われています。法隆寺は、桧を組んで建てられていますが、千年以上前に建てられたものです。解体修理をしていますが、創建当時の、桧材が、千年以上もの間、風雪に耐え、法隆寺の堂塔を支えているわけです。
 また桧は、伐採して木材にした時よりも、二百年位経た時が、木材としての強度が、強いと言われています。
 桧も色々と産地がありますが、結局、小径木よりも、大径木、つまり樹齢何十年の桧よりも、樹齢何百年の桧の方が、木材にした時、狂いが少ないです。そういう桧で、水屋たんすを造ると、何代も使えます。

弁柄、すすによる着色(べんがらぬり)

弁柄、着色例 家の柱や、水屋や、戸棚は、古くから伝統的に、弁柄やすすを塗って、耐久性を持たせてきました。
 うちでも、水屋、戸棚などは、この弁柄塗りで、仕上げることが多いです。
 弁柄は、酸化第二鉄の赤い顔料です。すすは、いわゆるあの黒いすすです。普通、弁柄とすすを混ぜ合わせて、木地に塗りますが、その調合加減で、赤色〜茶色〜黒色と好みの色にすることができます。
 そして、柿渋、(渋、生渋、とも言いますが、豆柿を絞って作ったもので、防水、艶出し、手垢止めに使います。)を塗り、油(乾性油といって、自然に乾く油を使います。主にえごまの油を使います。)で拭き上げて、色止めと、防水、艶出しをします。

水屋箪笥製作例 (オーダー家具・注文家具・無垢の檜の家具)

水屋箪笥(京水屋箪笥) 注文製造

水屋とは、食器や鍋をいれる戸棚のことです。(食器棚)
水屋箪笥(京水屋箪笥) 製作、上段、弁柄すす着色後、渋引き 、油塗布(ベンガラ塗り)
  水屋、戸棚(京水屋、上段)
材質(框組ヒノキ、引出し前板 引戸 腰板ケヤキ、棚板裏板他スギ)
仕上げ(弁柄、すすで着色し、渋引き、油仕上げ)
寸法幅1895×高さ900×奥行き538)

水屋箪笥(京水屋箪笥) 製造、下段、弁柄すす着色後、渋引き、油塗布(弁柄塗り)
  京水屋下段
この上に、上の上段を積み重ねて使います。
下段寸法(高さ830)

 京都のお客様です。古い水屋箪笥を、洗って、修理再生して欲しいというご注文を頂き、見に伺いましたところ、虫食いがひどく、大変傷んでおりました。
 下の段は、全部作り直さなくてはならない状態でした。
 上の段も、やはり半分位部材を、新しい物に替えなくてはいけない状態でした。
 お客様と相談の結果、結局、新しく桧で、造り直すことになりました。
 欅の引出しの前板と金具類等を、再利用しました。ケヤキの古い板は、削り直し、金具は、サビをとって黒塗りして使いました。
  寸法、造りは同じ水屋箪笥に造りましたので、ご一家が、昔からあるものを引き継がれた格好です。
 
(費用は、上段、下段、1式で156万円でした)

水屋箪笥(近江水屋箪笥) 受注製作

水屋箪笥(近江水屋箪笥) 製造、弁柄すす着色後、渋引き、油塗布(弁柄塗り)幅1050×高さ1710×奥行410
 桧の水屋箪笥です。框組(かまちぐみ)は桧で、引出し前板や、引戸の腰板は、欅です。内側の棚板や、底板、側板は、杉です。弁柄、すすで着色し、渋と油で艶を出しています。 
 
 滋賀県、近江八幡市のお客様です。以前、幅一間(180cm)の水屋箪笥を洗って、修理再生(リフォーム)し弁柄を塗って、仕上げてお持ちしました。そのとき、ご一家の皆様が大変、お喜びになられました。
 今回は、息子様ご夫婦が、少し小さめの、小じんまりとした、近江水屋箪笥を、新たに造って欲しいと注文頂きました。
 機能性を重視し、素朴で、シンプルな水屋箪笥にしました。
 
(費用は87万円でした)

水屋箪笥のリフォーム(洗い、修理、再生)

 水屋箪笥は、解体したり、洗ったり、修理して、再び使うことができます。
 リフォームの工程と事例を、下記に簡単に紹介したいとおもいます。

水屋箪笥の修理再生(リフォーム)の作業工程 (家具修理再生の作業工程)

部材を外して洗います

水屋たんす洗いリフォーム(修理、再生) 、解体して洗った状態 ヒノキの框組(かまちぐみ)の水屋箪笥です。
 修理するために、棚板や、天板や、側板を外して洗った所です。





修理、調整し全体にカンナがけをします。

水屋たんす再生リフォーム(洗い、修理更生) 修理調整しカンナで表面を削って仕上げた状態 修理、調整し全体にカンナがけをして、削り直した状態です。
 引戸の入る敷居などは、溝とあぜがなくなっており、削り取って掘り込んで、新しい溝とあぜを作った桜の木をはめ込みました。
 そして、引戸の方も下端が磨り減っており、新しい木をつぎ足して下駄を履かせて調整しました。引出しの入るレールや棚も調整したり新しく付け替えたりして、引出しがスムーズに出し入れ出来るように修復、調整します。
 棚板や側板は、杉材が貼ってありますが、木と言うものは何十年も年数が経つと、そこそこ乾いた木でもやはり縮んできて、大体、繊維と平行に1%ほど縮みます。
水屋箪笥 修理(再生リフォーム)、下部、修復し、調整後カンナで全体を削り直した状態 この水屋箪笥の天板や棚板は、はぎ合わせて幅約180cmの幅の板にして貼ってあります。ですから、180cmの1%といいますと約2cmです。この水屋箪笥の天板や棚板も、縮みによる割れや接ぎきれの5mmから1cm程度の隙間が、4箇所前後開いておりました。つまり、合計で3cm程度縮んでいた訳です。その縮んだ分3cm程度を、新しい杉材を継ぎ足して、はぎ合せ直して貼り直します。
 このようにして、出来るだけ部材を再利用します。しかしながら、破損が激しい場合は取り替えます。この水屋箪笥の場合、お客様が、棚板はさらの杉材で機嫌よく使いたいと言うことで、取り替えました。さらは、杉の木の香りが漂い、機嫌の良いものですが、古い木も洗えば木の良い香りがぷーんとします。
 見た目のきれいさも大事ですが、いかに、修理をして調整するかが大事な点です。
 この水屋箪笥は、最初は建具もまともに開けたり閉めたり出来ない状態でしたが、修理をして、スーッ、ピタッと開け閉め出来るように、修復、調整しました。また、天板や、裏板や、棚板などの割れなどの隙間は、全て、修復してなくしております。 このように、いかに、使い勝手を優先して、修理、再生する事が、大事かと思います。

伝統的な水屋箪笥は、弁柄とすすで着色します

水屋箪笥 洗い、修理(更生リフォーム) 仕上げ作業、弁柄すすで着色  弁柄とすすで着色します。弁柄は、赤っぽい朱の顔料で、すすは、あの黒いすすです。それを混ぜ合わせて、好みの色を出して、着色します。
 この水屋箪笥は、ちょっと黒っぽい色に着色しました。写真は、弁柄と、すすで、着色した状態です。これから、艶出しの工程に入ります。 

渋を引き、えごまの油で拭いて、艶を出して仕上げます

水屋箪笥 修理(再生リフォーム)、弁柄、すす、渋、油で仕上げる(下部) 
水屋箪笥、下段
 
水屋箪笥リフォーム(修理、再生) 弁柄塗り、渋引き、油ぶき、仕上げ完了(上部)
水屋箪笥、上段
  渋を引き、えごまの油で拭いて、艶を出して仕上げます。渋は、柿渋と言って昔から、防水に使われました。えごまの油は、昔から燈油 として使われていました。えごまの実から取った油は、乾性油といって、1週間ほどで、乾きます。このように、うちでは、伝統的な、材料と手法によって、仕上げております。最後に、金具や、鏡板などを取り付けます。写真は、全ての作業が、終わったときに、撮った写真です。普段は、上段と下段を積み重ねて使います。
 
(費用は56万5千円でした)
                                         

水屋箪笥 洗い、修理、再生(リフォーム)例 (家具修理再生例)

水屋箪笥(京水屋箪笥)洗い、修理再生(リフォーム)、弁柄塗り仕上げ

水屋箪笥 再生リフォーム(洗い修理、削り直し)、弁柄塗り仕上げヒノキの框組みの水屋箪笥です。
 上段だけ使いたいというお客様の希望で、新たに台輪を作りました。
 また、天板に物を置いて使いたいという希望があり、ヒノキの13mm板に天板を張り替えました。
 さらに、内部の棚は、桧で新しく、作り直しました。
 洗って、修理し、削り直して、弁柄とすすで着色して、渋を引き、油で拭き上げて、艶を出して仕上げました。

 
(費用は35万円でした)

水屋箪笥(京水屋箪笥)修理、洗い更生(リフォーム)、弁柄塗り仕上げ

水屋箪笥、上段、下段
水屋箪笥 修理再生(洗いリフォーム)、弁柄塗り仕上 お客様は、京都在住でうちのすぐ近所におられます。九州鹿児島に住んでおられる息子様ご夫婦が、再生して何とか使いたいということで、ご注文いただきました。
 ヒノキの框組みの水屋箪笥です。
 下段は、傷みが激しく、新しく作り直しました。ただ、引戸は、再利用しました。
 洗って、修理し、削り直して、弁柄とすすで着色し、渋を引き、油で拭き上げて、艶を出して仕上げました。
 色は、色を古びた感じがよいという希望により、すすを多くしてすすけた黒っぽい仕上がりにしました。
 
(費用は45万円でした)

水屋箪笥 修理再生リフォーム、上段と下段、下段は新しく製作(引戸は再利用)
水屋箪笥、戸棚(京水屋箪笥)


水屋箪笥(京水屋箪笥)洗い、リフォーム(修理再生)、弁柄塗り仕上げ

水屋箪笥 修理再生リフォーム、(京水屋箪笥)   ヒノキの水屋箪笥です。
 お客様は、大阪に住んでおられますが、京都のご実家にある京水屋箪笥を再生して使いたいということで、ご注文いただきました。
 後側が傷みが激しく、前面を残して、後側は、新しく作り直しました。棚板も張り替えました。洗って、修理し、削り直して、弁柄とすすで着色して、渋を引き、油で拭き上げました。 

   (費用は30万円でした)

水屋箪笥、戸棚(京水屋箪笥)

 

組立式 水屋箪笥(戸棚箪笥) 修理、洗い更生、弁柄塗り仕上げ

水屋箪笥(戸棚箪笥) 修理再生、弁柄塗り仕上げ 京都の町屋を伝統的な工法で修復されている、工務店のお施主様のご注文です。
作業場での作業完了時です。




水屋箪笥 (組立て式戸棚箪笥) 修理再生、納品先で組立て作業お客様のお宅での納品、組立作業時の写真です。





戸棚箪笥 (組立て式の水屋箪笥)修理再生、組立て作業、調整完了組立式の水屋箪笥(戸棚箪笥)です。
建具のはまる敷居と、左側引出しと、棚を新しく作り替えました。組立式なのでその調整が大変でした。
仕上げは、弁柄、すすで着色し、渋と油でつやを出しました。
 
(費用は60万円でした)

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会社名 大東漆木工(おおひがしうるしもっこう)
〒602-8491 京都市上京区西社町198−1
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